2012年03月22日
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三百字小説『多摩ランナー』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 坂が多い多摩丘陵を最速で駆け抜ける者は誰か。多摩地区のランナー達は熱く語り合った。しかし、語っても結論は出なかった。やはり走るしかない。

 僕らは、多摩丘陵を駆け抜けて何回も競争した。その中で、徐々に序列が付いていった。もちろん、トップは僕だった。

 最後の最後に、決着をつけるレースが企画された。特に坂が多い難コースだった。

 油断したら負ける。慢心は禁物。

 僕は必死に走った。ライバル達は全員自分の背中にいた。

 僕は得意になって走った。

 そのとき、僕を抜き去って走る影があった。

 多摩丘陵土着の住人、タヌキだった。

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦