坂が多い多摩丘陵を最速で駆け抜ける者は誰か。多摩地区のランナー達は熱く語り合った。しかし、語っても結論は出なかった。やはり走るしかない。
僕らは、多摩丘陵を駆け抜けて何回も競争した。その中で、徐々に序列が付いていった。もちろん、トップは僕だった。
最後の最後に、決着をつけるレースが企画された。特に坂が多い難コースだった。
油断したら負ける。慢心は禁物。
僕は必死に走った。ライバル達は全員自分の背中にいた。
僕は得意になって走った。
そのとき、僕を抜き去って走る影があった。
多摩丘陵土着の住人、タヌキだった。
(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)